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ファイナンシャルアドバイザリー

成功するM&Aのカギ:売りFA・買いFAの役割と求められる専門スキル


ファイナンシャルアドバイザリー(FA)業務は、企業のM&A(合併・買収)プロセスにおいて、重要な役割を果たしています。FAは、売り手や買い手の立場に立ち、M&Aを成功に導くために複数のフェーズでクライアントをサポートします。本記事では、売りFAと買いFAそれぞれの業務について、具体的なプロセスや必要なスキル、また業務の魅力について詳しく解説します。

売りFAの業務フロー

ステップ1:売却目的別の戦略立案

1.事業再編
企業が複数の事業を持っている場合、不採算部門や非コア事業を売却し、コア事業に集中することが目的となることがあります。このケースでは、買い手にとって魅力的な事業であるかどうかを見極め、事業の売却が企業全体に与える影響を最小限に抑える戦略を立案します。


2.資金調達
新しい成長機会に向けて資金を確保するため、資産の一部を売却する戦略です。この場合、迅速に資金化できることが重要なため、短期間で売却が可能な戦略を優先します。買い手候補としては、即時に資金を提供できる企業やファンドが挙げられます。


3.オーナーの引退
オーナー経営者が引退する際、後継者がいない場合には、企業全体を売却することが目的となります。このケースでは、企業の文化や従業員の待遇を重視し、企業の存続が長期的に保証される買い手を選定することが重要です。


ステップ2:バリュエーション(Valuation)の実施

売却戦略を策定する際、企業価値の正確な評価が必要です。これには、以下のようなバリュエーション手法がよく使われます。

DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)

将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く手法です。例えば、ある企業が今後5年間で年間5億円のキャッシュフローを生み出すと予測される場合、割引率を8%と仮定して現在価値を算出します。この手法は、事業再編や成長計画を前提に、長期的な収益性を評価するのに適しています。

EBITDA倍率法

企業の収益力に基づいた評価方法です。例えば、ある企業が年間3億円のEBITDAを計上している場合、業界平均のEBITDA倍率が6倍であれば、その企業の価値は18億円と評価されます。特に、短期間での資金調達を目的とする売却戦略では、このシンプルな評価法が効果的です。

ステップ3:買い手候補の選定と交渉

買い手候補の選定は、売却プロセスにおいて極めて重要なステップです。企業の売却戦略や財務状況に基づき、適切な買い手を見つけることが、取引の成功に直結します。
下記に買い手候補の選定基準を具体的に解説します。


1.シナジー効果の有無
シナジー効果は、M&Aにおける重要な要素です。買い手企業が売り手企業を買収することで、コスト削減や収益拡大の可能性があるかどうかを検討します。例えば、同じ業界内の競合企業を買収することで、重複する部門を統合しコストを削減できるケースや、買い手企業の製品ポートフォリオを強化するシナジー効果が見込まれる場合が該当します。


2.財務的健全性と資金調達能力
売り手企業は、買い手の財務状況も重要な要素として評価します。特に、大規模なM&A取引では、買い手が十分な資金調達能力を持っているかどうかが、取引の成立に大きく影響します。ファイナンシャルアドバイザーは、買い手の財務諸表を確認し、取引を完了できる十分な財務基盤を持っているかを評価します。


3.文化的フィット
企業文化のフィットは、買収後の統合作業がスムーズに進むために重要です。特に、オーナー経営者が引退する際には、企業の文化や従業員の待遇が維持されることを希望する場合が多く、そのため買い手が同じ価値観や企業文化を持っていることが大切です。文化的なミスマッチがあると、買収後に従業員のモチベーションが低下し、最終的に業績にも影響を及ぼす可能性があります。


買いFAの業務フロー

ステップ1:ターゲットの選定(目的別3パターン)

■市場シェア拡大を目指すパターン
買い手企業が競争の激しい業界で市場シェアを拡大したい場合、同業界内で競合する企業や、関連分野で強みを持つ企業をターゲットにするパターンです。市場シェアを拡大することで、競争優位を確立し、業界内でのポジションを強化することが目的です。

【選定基準】
・同業界内の中堅企業:
買い手企業が一定の規模を持っている場合、中堅企業をターゲットにしてシェアを拡大します。これにより、買い手企業は既存の顧客基盤を強化し、価格競争力を高めることができます。
・重複部門の統合によるコスト削減:
同業種の企業を買収することで、オペレーションが重複する部門を統合し、コスト削減効果を得ることが期待できます。


■新規市場への参入を目的とするパターン
買い手企業が地理的な市場拡大や、新しい事業領域への参入を目指す場合に選定するパターンです。この戦略は、特に新興市場や、既存の市場では到達できないターゲット顧客層を取り込むためのM&Aに適しています。

【選定基準】
・地域的プレゼンスを持つ企業:
新規市場へ参入する際、現地に確固たるプレゼンスを持つ企業をターゲットに選びます。既存の市場ネットワークを活用することで、短期間で市場に浸透することが可能です。
・技術や製品ポートフォリオの多様化:
既存のビジネスモデルを拡張するために、新規市場で革新的な技術や製品を持つ企業をターゲットにします。


■技術力の強化を目指すパターン
買い手企業が自社の技術力を強化し、競争優位をさらに高めたい場合、技術や研究開発に強みを持つ企業をターゲットにするパターンです。この場合、主にハイテク業界やバイオテクノロジーなど、技術革新が急速に進む分野でよく見られます。

【選定基準】
・革新的な技術を持つスタートアップ企業:
技術的な優位性を持つ小規模なスタートアップ企業は、大手企業にとって魅力的なターゲットとなります。これにより、大手企業は短期間で技術力を強化でき、新規製品の開発や市場投入を加速させることができます。
・研究開発リソースの補完:
自社が持たない技術分野を補完するためのM&Aを行うことで、製品開発力を向上させ、競争力を強化します。


ステップ2:デューデリジェンスとリスク評価

デューデリジェンス(DD)は、M&A取引におけるリスク評価の要です。ここでは、財務デューデリジェンスだけでなく、ビジネス、法務、税務など幅広い分野での調査が行われます。


・財務デューデリジェンス
財務デューデリジェンスでは、買収対象企業の過去の財務諸表やキャッシュフローを調査し、企業の財務的健全性を評価します。特に、負債の状況や資本の効率性が重要な評価ポイントです。


・ビジネスデューデリジェンス
ビジネスデューデリジェンスでは、対象企業の市場ポジション、競争力、成長戦略を分析します。特に、事業の持続可能性や、買収後のシナジー効果が期待できるかどうかを評価します。


専門的なスキル解説


M&Aプロセスにおいて、ファイナンシャルアドバイザリー(FA)は、財務・ビジネスデューデリジェンス(DD)や財務モデルを駆使して、取引のリスクを評価し、最適な意思決定をサポートします。ここでは、各スキルを専門的に深堀りして解説します。

財務デューデリジェンス(財務DD)

**財務デューデリジェンス(Financial Due Diligence, 財務DD)**は、M&Aプロセスにおいて、対象企業の財務状況を精査する重要なプロセスです。特に、対象企業の過去の財務諸表を分析し、企業の収益性、資金繰り、財務健全性を確認することが目的です。

キャッシュフロー分析

キャッシュフロー分析は、財務DDの中心的な部分です。売上高や利益のデータだけではなく、企業が生み出す現金収支の流れを把握することで、企業がどの程度のキャッシュを将来的に生み出せるか、また負債返済や運転資本の増加にどの程度耐えられるかを評価します。
企業はキャッシュフロー計算書に基づいて、営業活動によって得られた現金のうち、投資活動や負債返済に充てることが可能であるかを判断します。もしマイナスの投資キャッシュフローが続く場合、新たな資金調達や事業再編が必要となることもあります。

収益性とコスト構造の分析

収益性の分析では、過去3~5年の損益計算書を確認し、営業利益、純利益、そして各利益率の推移を検討します。さらに、コスト構造の分析を行い、固定費と変動費の割合、コスト削減余地を特定します。これにより、対象企業が今後どの程度の利益を維持できるか、コスト削減による収益性向上の可能性を評価します。

資本構造とレバレッジ比率

財務DDでは、対象企業の資本構造(自己資本と負債のバランス)も分析します。レバレッジ比率(負債/自己資本比率)は、企業の財務リスクを測る重要な指標であり、高いレバレッジは取引後の財務リスクが大きいことを示します。

ビジネスデューデリジェンス(ビジネスDD)

**ビジネスデューデリジェンス(Business Due Diligence, ビジネスDD)**は、財務DDと並行して行われ、対象企業のビジネスモデル、競争環境、業界動向、市場ポジション、技術力などを評価するプロセスです。ビジネスDDは、買い手にとって、対象企業が持続的な成長を実現できるかどうかを判断するための鍵となります。

競争優位性の分析

買い手は、対象企業が市場で競争優位を持っているか、またその優位性が持続可能であるかを評価します。ここでは、ポーターの5つの力モデルなどのフレームワークを使い、競争圧力(新規参入者、代替製品、買い手・供給者の交渉力など)を分析します。

業界と市場環境の評価

業界の成長性や市場動向もビジネスDDにおいて重要な要素です。買い手は、対象企業が参入している市場が成長しているか、またその業界が今後どのような変化を迎えるかを評価します。例えばIT業界におけるクラウドコンピューティングの成長が予測される場合、クラウドサービスを提供する企業は、今後も成長が期待できる対象企業と見なされます。一方で、成熟産業では買収後の成長余地が限られるため、事業再編や効率化が求められることがあります。

顧客基盤と取引先の分析

対象企業が安定した顧客基盤を持っているかどうかも重要です。ビジネスDDでは、売上の集中度(特定の顧客に依存しているか)、長期契約の有無、顧客満足度調査などを行い、顧客との関係性を評価します。特に、売上の大部分が少数の顧客に依存している場合、その顧客が取引を続ける可能性を慎重に検討します。

財務モデル(財務モデリング)

財務モデルは、M&A取引において、企業価値を算定し、さまざまなシナリオを想定して収益性やキャッシュフローを予測するために用いられます。DCF法やLBO(レバレッジド・バイアウト)モデルなど、複数の財務モデリング手法が活用されます。

DCFモデル(ディスカウントキャッシュフローモデル)

DCFモデルは、企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローを割引率を用いて現在価値に換算する手法です。このモデルを用いることで、企業の価値を理論的に評価することができます。


DCFモデルの計算例
・将来5年間のキャッシュフローが毎年2億円
・割引率を8%
・最終年度のキャッシュフローに成長率2%を適用した場合


この情報をもとに、DCFモデルで現在価値を算出すると、企業の価値は約15億円となります。割引率や成長率が変わると、企業価値も大きく変動するため、これらのパラメータ設定が非常に重要です。

LBOモデル(レバレッジド・バイアウトモデル)

LBOモデルは、買収対象企業の買収に借入金を活用し、買収後にその企業のキャッシュフローで借入金を返済していくシナリオをシミュレートするモデルです。この手法は、PEファンドなどがよく使用します。


LBOモデルの計算例
・企業の買収価格: 100億円
・資金の50%を借入金、50%をエクイティで調達
・買収後、毎年のキャッシュフローを利用して借入金を5年間で返済


このシナリオでは、借入金を活用することで、エクイティ投資のリターンが大幅に増加しますが、同時に財務リスクが高まるため、慎重なキャッシュフローの予測とリスク評価が求められます。

まとめ

ファイナンシャルアドバイザリー業務は、非常に高度な専門知識が求められる職種です。財務分析、ビジネスデューデリジェンス、M&A戦略、法務・税務知識など、幅広い分野にわたるスキルを日常的に使用します。特に、M&Aプロセス全体に深く関わるため、財務モデルを駆使した企業価値の評価や、取引条件の交渉、契約書の確認といった実務的な知識が身につきます。

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